T氏のアトリエ


もともとは、T氏と同様に画家であった父親の山荘として設計されたもので、
急な斜面を背に、大変見晴らしの良い土地に建てられています。

この建物の面白いところは、設計者が菅原栄蔵であるということです。
駒澤大学の耕雲館や銀座ライオンなどの、フランク・ロイド・ライト的な建築で知られていますが、
このような牧歌的な山荘の設計に携わったとは、にわかに信じ難い気持ちでした。
ところが、少々調べ物をしているうち、
昭和8年の銀座ライオンの建築のときに、あの有名なビアホールのガラスモザイクの美術指導にT氏の父親が携わっていることがわかり、
おそらくはこの時に、あるいはそれ以前に、菅原とT氏の間に接点があり、
この山荘の設計に繋がっていったことが推測されます。

めっきり数が少なくなった、箱根の戦前の別荘建築ということだけでも十分ですが、
著名でありながら、全国的にも数少ない菅原栄蔵の作品であること、
親子2代で著名な画家が住まわれた建物ということで、
県内でも貴重な建築のひとつとして数えられるものと思われます。(仁木)

Data
所在地:足柄下郡箱根町
構造:木造2階
設計:菅原栄蔵
施工:
建築年代:昭和12年

写真は建物の裏側にあたる。



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