小田原文学館本館
(旧田中光顕別邸)

JR小田原駅からだいぶ離れた早川寄り、海も近い閑静な住宅街の中、
元宮内大臣・田中光顕氏の旧別邸が、小田原にゆかりのある文学者の資料等の展示施設として活用されています。
昭和も2桁に入った頃の建物ですので、あっさりモダンな意匠であり、かつ、R.C.造の住宅ということで、
ひょっとすると、この手の建物が陥りやすい、無機質的な表情かと思いきや、行ってみると、
(私はモダニズム嫌いではありません。念のため。)
スペインから取り寄せたといわれている、正真正銘のスペイン瓦を載せ、玄関側の窓には洒落たグリルが、
また、3階バルコニーにはパーゴラが設置されている等々、
いくつかの味付けがなされていて、むしろ豊かな表情の建物でした。

庭面のサッシュも新しいものと交換されるなど、内部を中心に大きく改装されてはいるものの、
階段まわりやサンルームのタイルなど、当時のものと思われるところも部分的ではありますが残っています。
また、2階のサンルームから見る庭が格別。ここでのんびりと、お茶でもしたいものです。(仁木)

Data
所在地:小田原市南町2-3-4
構造:R.C.3階
設計:曽禰中條建築事務所
施工:
建築年代:昭和12年
備考:国登録文化財

施主の田中氏は、建物竣工のわずか2年後に亡くなられています。


デザインされたグリル



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