東京大学大学院映像研究科
(前富士銀行横浜支店・旧安田銀行横浜支店)


R.C.造ながら、外壁に粗い石を幾段も積み上げて、
あたかも堅牢な石造り建造物のように見せている「ルスティカ積み」といわれる手法。
入口付近にはトスカナ式の大柱が、大通り面と馬車道面にそれぞれ四本立ち並び、やもすれば威圧感さえ感じるところですが、
その柱の間から顔をのぞかせている可愛いアーチ窓が、よい緩衝剤となって、全体的には柔らかい表情をみせています。
旧安田銀行は、これと同一の様式を用いて、全国に多くの支店を建設していきました。
ただ、典型的銀行建築といえども、これだけの規模と良好な保存状態を保っているものは数少なく、
かねてから、建物を引き継いだ富士銀行へは、横浜市や学会等から保存を求める要望が出ていました。

平成13年、横浜支店と伊勢佐木町支店は統合となり、富士銀がこの建物を手放すことが決まると、
横浜市は建物と敷地取得の交渉に乗り出し、平成14年3月31日、
売買における敷地価格で双方の合意が得られたと同時に、建物は富士銀から無償で寄附されることとなりました。

その後建物は、「横浜市市民活動共同オフィス」として、さらにはBankART1929の活動拠点として使用された時期もありましたが、
平成17年、横浜市が東京芸術大学の大学院映像研究科の誘致に成功し、同大キャンパスとして恒久的に活用されることとなりました。(仁木)

Data
所在地:横浜市中区中区本町4-45
構造:R.C.2階
設計:安田銀行営繕課
施工者:大倉土木
建築年代:昭和4年
備考:横浜市認定歴史的建造物



馬車道大津ビル(手前)とのツーショット。その他にも日本火災横浜ビルや県立歴史博物館など、
この付近は歴史的建造物が建ち並ぶ、戦前の景観を今に伝える重要な一画。         

正面入口上部の装飾

旧営業室内部を巡る回廊

入口部分の装飾



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